2022年8月6日~12日の7日間に渡り開催されたアートフェス norm Art & Design Festival 2022にて初披露されたライゾマティクスの新作インスタレーション。会場は世界最大のホテルチェーン、マリオット・インターナショナルが展開するラグジュアリーブランドWホテルとして日本で初めて大阪・心斎橋に開業した W大阪。
Nosaj Thing x Daito Manabeによるオリジナルの新作サウンドに反応し、高精度に同期して光るデバイスをW大阪の4F中庭部分、バーエリアに約50個設置。また、LED Robot3台が場内を自律走行し、LEDのパターンもサウンドと同期する。会場全体がサウンドに反応するライトインスタレーションとなった。
ライゾマティクスが取り組んでいる、公共スペースにおける音響や照明などの環境デザインに関するシステムの研究開発の一貫として、本作は発表された。今後もW大阪での定期的なインスタレーション制作を通じて、技術・作品創出の可能性を模索していく。
norm art & design festival 2022
Technology
Home Sync Light
<ハードウェア>
今回の施策のために新たにライトデバイスをデザイン。様々な設置方法で楽しめるように、ランプシェード型、平面ライト型、透明バブルバルーン型、3種類を制作した。ベースとなる電子回路や筐体は共通のもので、置き方や装飾でバリエーションを出せる設計になっている。また、ACDCコンバータを内蔵し、家庭用電源にそのまま繋いで利用することができる。
<ソフトウェア>
音響透かし技術は、同期のための楽曲のタイムコードに連動したものと、リアルタイムライトエフェクトを実現するためのコマンドタイプの2種類を実装、使用している。ライトデバイス側では、内蔵メモリに格納されたライトパターンをタイムコードに同期して再生しながら、そこにコマンドに反応するエフェクトをリアルタイムで合成してLEDを点灯させている。
ライトパターンの生成はミュージシャン、サウンドデザイナーが最も扱いやすいMIDIデータを用いて照明パターンを生成するシステムを開発した。
- MIDI Control Dataによる照明エフェクトの制御
- MIDI Noteによる色、明度の制御(DMX)
- Max, oFのシミュレーター作成
を行っている。
LED robot
<ハードウェア>
オムニホイールを装着した自律走行ロボットに、4面のLEDディスプレイを配置した。LEDディスプレイは2.5mmピッチの高精細なものを採用。全方位移動が可能なホイールにより、エリア内を自由に動き回るロボットの動きと、絶えず変化する映像演出をどの角度からでも鑑賞することができる。
<ソフトウェア>
・自律走行制御システム
各LED robotは、自身の走行速度の推定、周囲の物体との距離計測、光学カメラによる環境の特徴検知を統合した、外部からの計測に頼らない自己位置推定システム、および自律走行システムを備えている。これにより、事前に設定した走行可能領域内で、設置物や鑑賞者に衝突せずに自律走行することができる。
「散策モード」では他の機体や鑑賞者の接近に応じてインタラクティブに進路を変えてエリア内を自由に動き回るため、場内の機体配置はランダムに組み変わり多様な表情を見せる。
「位置指令モード」ではLED robotは指定された座標に向けて自律移動する。このモードを使うことで、サウンドやライティングに同期してデザインされた軌道(振り付け)に合わせた走行による演出も可能となる。
・映像システム
HomeSyncLightのライトの色、明滅やLED robotが人を検知することでLEDの映像が変化する。LED robotのサウンドやライティングに合わせた走行パターンの変化、制御もこのシステムで行っている。