<概要>
ブロンド・レッドヘッドのフロントマン・KAZUのMV「Come Behind Me, So Good! 」を真鍋大度と清水憲一郎(PELE)がディレクターを務め、ライゾマティクスが制作しました。ダンスは ELEVENPLAYの皆さん、ChoreographerにはMIKIKOさんにご参加いただいております。ドローンで撮影した実景の空撮素材にダンサーの4D-Viewsデータを配置し、リアルと3Dの世界をシームレスに行き来するワンカットMVを目指しました。ドローン、4Dviews、Photogrammetry, Faro(laser scanner)のデータを生かしCG加工し独自の手法で制作を行ないました。
2020年3月に公開された本作はLondon Music Video FestivalのAnimated 部門にも選出されるなど、広く注目されております。本ページではMVの具体的な撮影方法などBehind The Sceneを紹介します。
<テクノロジー>
1, フォトグラメトリー
フォトグラメトリーと呼ばれる技術をベースにでダンサーの3Dデータを制作しています。
フォトグラメトリーとは複数のアングルから撮影した静止画から3Dデータを作成するというもので、2Dデータから3次元データを再構成するための技術です。4D viewsスキャンシステムを使用し32台のカメラで9名のダンサーたちを撮影しました。32台分のカメラの映像をマトリクスで並べフォトグラメトリーで立体化を行い、そのデータを元にダンサー達をフルCGで再現しています。MVに登場するKAZU本人と9名のダンサーは全てCGで配置されています。
また、今回はKAZUやダンサーの3Dデータの他に地形などの動かないオブジェクトに関してはレーザースキャナーでスキャンすることも行なっています。具体的にはレーザー照射でロケ場所の地形の写像を高精度3次元データ化する3Dレーザースキャナー”Faro”を使用し、3D点描データやテクスチャー用環境データなど広範囲に収録する事でロケ地の地形を3D化しています。
2, コレオグラフィー
楽曲がもつ輪唱やループの構造のおもしろさを振り付けで表現して欲しいという真鍋大度のディレクションを元に、ELEVENPLAYのMIKIKOが振り付けを制作しました。この楽曲は大きく分けて9つのフレーズに分ける事ができたため、出演するダンサーは9名となりました。
短いフレーズはループの面白さを長いフレーズはメロディの壮大さを表現することを心がけました。それぞれのダンサーが同時に踊る事でハーモニーを生み出し、この楽曲の構造を身体を使って可視化することを目指しました。
3, ドローン
今回のロケ撮影は全てドローンカメラで行っています。ドローンによるワンカット撮影の中で朝、昼、夜の別の時間帯をシームレスに行き来させる表現に挑戦しています。ドローンにGPSやLitchiといった自動航行アプリで飛行経路をプログラムし、ディレクターの指示で飛行経路を決め込んで行きました。軌道、高度や飛行速度、カメラの向き、ターンのポイントなど飛行テストを繰り返し精度を上げていきました。
4, シームレスミクストリアリティ
地形データの3Dデータを取得してダンサーの3Dデータと同じ3D空間内に存在できるように合成する手法を我々はシームレスミクストリアリティと呼んでいます。
過去には、perfumeLive、“Nosaj Thing”Cold Stars”feat.Chance The Rapper”MVなどでも同じ手法を使っていますが、今回のようにたくさんのダンサーや、大きな地形データを使ったケースは初めてとなります。
また、KAZUがポイントクラウドで登場しているシーンは4Dviewのデータからポイントの色情報やアウトラインなどのデータを利用して Houdini上でポイントを生成しています。ポイントの量感や間隔を調整したのちに楽曲データの音の波形やヴォーカルの音に 合わせてノイズを追加しました。
大きな地形に関しても3Dデータをもとにモデル内部に点群を生成し 動きに追随して発生させたパーティクルをライン化しています。また、ウェーブエフェクトも地形3Dモデルを利用して作成しています。地形3Dモデルにディスプレイスメントを加え UVやポリゴンを地層に沿って整えることでウェーブが綺麗に流れるようにしています。