歴史と現代の対話というテーマのもと、加賀藩前田家の歴史から甲冑という文化資産を現代的にアップデートした金沢21世紀美術館の企画展において、甲冑をCTスキャンし、肉眼では観察不可能な甲冑の断面形状や内部構造を様々な手法を用いて可視化した映像作品(4分35秒)を制作・発表した。
トップ画像:(左)黒漆塗様仙台胴具(江戸時代)/井伊美術館蔵
●作品コメント
兜や鎧は身を守る機能を持つ武具であると同時に、アイデンティティを表現するためのアイテムであり、現在におけるファッションとしての意味合いもあったと考えられる。特に兜は機能性とはかけ離れた意匠を持つものも多く、現在のストリートファッションとの接点を見出すことも出来る。その中でも特徴がありスタイリッシュな兜の一つに、戦国時代から江戸時代前期の奥羽の国の大名・武将である伊達政宗のものがある。黒塗りの兜に大きな金の三日月がつけられた兜は伊達政宗のアイデンティティであり、トレードマークとなっていた。ハリウッド映画『スターウォーズ』に登場するダース・ベイダーの衣装は、伊達政宗の甲冑を所蔵している仙台市博物館が、映画の制作関係者にその資料を提供したことによって誕生したと言われている。このエピソードが示すように、伊達政宗の甲冑が持つ意匠は時空を超えて広く知られ、研究されてきた。
そこで本作の制作にあたり、伊達政宗が纏った黒甲冑のレプリカを実物を傷つけずにCTスキャンすることにより、肉眼では観察不可能な甲冑の断面形状や内部構造を様々な手法を用いて可視化を行った。
とくに内部構造については肉眼では観察不可能なため、これまで調査が限定的であり、今回着目するに相応しいと考えた。
実際、甲冑をCTスキャンすることによって、当時の技法に関する新たな知見を得ることが出来た。本作品ではその結果を用いて約5分間の映像作品を制作しインスタレーションへと展開した。
甲冑の解剖術―意匠とエンジニアリングの美学
2022年5月3日(火・祝) -7月10日(日)
金沢21世紀美術館
※「甲冑の解剖術―意匠とエンジニアリングの美学」展カタログは、6月3日より金沢21世紀美術館ミュージアムショップで販売します。また、下記リンク先で予約受付中です。
amazon 「甲冑の解剖術―意匠とエンジニアリングの美学」展カタログ
金沢21世紀美術館「甲冑の解剖術ー意匠とエンジニアリングの美学」展示風景
photo: Muryo Homma (Rhizomatiks)